ねこプロ №56 内示の朝(『桜の花』に想う) 朝、通勤バスの中。窓から外を眺めていたら、こんな風景が目にとまった。背の高い男性と、小さな少女。交差点で信号待ちをしている。男性は、こちらに顔を向け、少女は背中ごし。ランドセルの肩紐を、両方、それぞれに握りしめ、斜めに男性を見上げ、何か会話... 2025.03.15 ねこプロ
ちちプロ №55 退学(夏目漱石『草枕』) 仕事を終え、家に戻る。直前に帰っていた二男と、リビングで鉢合わせになった。モコモコとした、黒いダウンジャケットを着たままの二男。神妙な顔つき。帰ってきたばかりのところ、申し訳ないんだけど、と話し出す。何だ、何だ、今度は何があった。重大なこと... 2025.02.26 ちちプロ
ちちプロ №54 巣立ちの春(『おにぎりと百均』に想う) 日曜日の朝。バナナを一本だけ食べて、直ぐに活動を開始した。休日も、短時間だけ、きまって早朝、まだ誰もいない職場に行く。管理職になってからの習慣となっている。一つには、週明けからの仕事の段取りを確認するため。また、一つには土日の新聞に目を通し... 2025.02.25 ちちプロ
ちちプロ №53 茹で卵の作り方(『卵の薄皮』に想う) 休日のお昼過ぎ。たくさん茹でた卵。殻をむきながら考えた。こんなふうに、むつむつと文句も言わず、何年も家事を続けた主婦ほど、心の中で「熟年離婚」を考えたりしているのだろうな、と。夫の方は、定年後、妻とゆっくり旅行でもしよう。そう、ぼんやり考え... 2025.02.15 ちちプロ
ちちプロ №52 レジリエンスと探し物(『合鍵』に想う) 朝、家族の、こんなLINEのやり取りに気がついた。鍵を無くして家に入れない。誰か開けて欲しい。それは前夜の午前零時頃。二男からのもの。夜更かしの長女から、呑気な「オッケー」のスタンプが返信されている。どうやら無事、家に入って今は寝ているよう... 2025.02.05 ちちプロ
ちえプロ №51 光の中の細雪(トルストイ『光あるうち光の中を歩め』) 一日の仕事を終え、職場を出る。帰りのバス停へと向かう。この時期の、その時間帯。日は落ち、すっかり辺りは暗くなっている。微かに明るさの残る、深く濃い赤紫の曇り空。見上げると、ちらちらと細かい雪が降っている。風があるのだろう。早いテンポで雪片が... 2025.02.01 ちえプロ
ちえプロ №50 指輪と七雪(新沼謙治『津軽恋女』に想う) 肌寒い朝。その日は、家を出るのが、少し遅くなってしまった。ちらちらと雪が舞っている。急ぎ足でいつものバス停へと向かう。歩きながら、財布をもって出たか、ハンカチはあるか。半ば無意識にポケットの上から触って確かめる。右の手袋をはめ、次に左をはめ... 2025.01.20 ちえプロ
ねこプロ №49 かにともも(赤松利市『藻屑蟹』) 朝の出勤時。職場のある八階まで。朝だけは階段で登るようにしている。一応、健康維持のため。早朝の、その時間帯。外部委託の清掃員の人達も、階段の踊り場などを使いながら、作業をはじめる準備をしている。床を水拭きするためのモップを、ところどころ立て... 2025.01.10 ねこプロ
のりプロ №48 読書感想文(太宰治『津軽』に想う) このとことろ、県内の市町村を巡る、という仕事を断続的に行っている。その日も朝早く、外に出た。どんよりとした曇り空。職場のワンボックスカーの、後部座席の窓から、流れ去る風景に目をやる。この時期恒例となっている、市町村役場を訪問して、意見交換を... 2025.01.03 のりプロ
ちちプロ №47 千と千尋とサンショウウオ(井伏鱒二『山椒魚』) ネットで調べ物をしていた時のこと。こんな質問箱のやり取りに目が留まった。「千と千尋の神隠し」をまた見た。4回目である。しかし、まったく意味が分からない。オクサレ様は、帰るとき、どうして「よきかな」と言ったの?カオナシって何者?最後にこちらの... 2024.12.28 ちちプロ