□□□ へそのないブログ □□□
◆忘れがたい本、作品、思い出。
◆1記事完結で紹介しています。
◆№1から辿れば私小説風読物。

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ちちプロ

№67 仲直り(志賀直哉『暗夜行路』)

休日の夕方。相撲中継を見ながら、リビングで一人、ブログの作業をしていた。集中したくて、テレビの音を絞ったまま。廊下の奥の玄関で、ガチャリと音がした。誰か帰ってきたようだ。ただいま、と長男が、玄関でつぶやく声が聞こえた。すかさず、お帰り、と返...
ねこプロ

№66 声(みうらじゅん『アウト老のすすめ』)

早朝、暗いうちに目が覚めた。眠るのは諦めて、布団の中でラジオをつけた。久しぶりに聞く、NHKラジオ。深夜から、翌朝まで、一人のアナウンサーが日替わりで司会を務める番組。以前はよく、時間調整のため、起きる時間まで、小さな音で聞いていた。定年を...
ちえプロ

№65 コンサート(エリック・クラプトン『Tears in Heaven』)

日曜日。長女が、服を買ってほしいという。大学の実習で、シンプルな白いシャツが必要になる。遊び着ではないので、買ってもらえないか、との理屈。午後、車で、郊外のファストフアッションの店へと向かった。そこなら、それらしいものがきっとあるだろう。F...
ねこプロ

№64 東京(龍幸伸『ダンダダン』)

暫くぶりに、東京へ向かった。4月になったら遊びに来いと、従兄弟たちから誘われて。新幹線に乗るのも数年ぶり。駅に行ってから切符を買おうと、ふらりと家を出た。平日にしては、随分と混雑している。こんなだったろうか。窓口で、ようやく通路側の席を一つ...
ねこプロ

№63 虎と鱒(映画『男はつらいよ』に想う)

月曜日、火曜日とそれなりに、朝から夕方まで、事務作業を進めた。水曜日になり、一日、休みにしようと思い立った。働いたといっても、9時から事務所に詰めて、4時を目処にあがる、というリズム。水曜日も休むことにすれば、週休3日。夢のようなサイクルに...
ちちプロ

№62 入学式(J.S.バッハ『主よ、人の望みの喜びよ』)

4月に入ってまもなくの平日。長女の大学の入学式だった。仕事を続けていたら、休暇を取ってまで出席しようとは思わなかっただろう。しかし、今なら、自分次第。長男と、二男は、中学生の頃には既に、私が行事に出ることの方を煙たがるようになった。自分のそ...
ちちプロ

№61 手紙(米米CLUB『手紙』に想う)

退職後の日々。小さなビジネスをスタートする準備を進めている。一人、こつこつと。両親が残した、郊外の一軒家。応接間だけでも、事務室風に変えたいと考えている。炬燵やテレビを、奥の座敷へ移動させ、応接用兼、作業用の大きめのテーブルを一つ置く。両親...
ねこプロ

№60 退職②(『花束』に想う)

33年間勤めた職場。最後の一日が始まった。午前中から、断続的にセレモニーが続く。私の職場では、定年年齢が見直されている途中。暫く、隔年で退職者が多い年と、極端に少ない年とが繰り返す。昨年、定年が一年延びた人達を含め、今年は退職者の多い年。近...
ねこプロ

№59 退職①(『お弁当作り』に想う)

遂に、この朝がきた。退職の日。出かけようとする私のことを、長女が、玄関先まで見送りに出てくる。ただし、これは、いつもの習慣。家族の誰かが出かけるとき、玄関で見送る家族のしきたり。亡くなった妻が定着させたルールである。妻の実家でも、妻が小さか...
ねこプロ

№58 休学(『シュレッダー』に想う)

退職を前にした数日。職場のデスク周りの整理に追われた。溜まった書類を整理し、シュレッダーをかける。その間、退職を知った知り合いが、断続的に訪ねてきてくれた。書類整理の手を止めて、一人一人。こちらからは同じ説明をし、相手からはねぎらいの言葉な...