○ねこプロ 「100万回生きたねこプロジェクト」(略称:100ねこプロジェクト)
時間を自分の手に取り戻すため転職に向けて準備を進める個人的なプロジェクト

№70 車中泊(『ドラクエ』に想う)
早朝、暗がりの中で目が覚めた。一瞬、記憶が混乱する。そうか、車中泊したのだ。どうやら、思ったより穏やかに、夜を過ごせたようだ。トイレに行きたいが、できれば、もう少し明るくなってから車外に出たい。もうちょっとだけ、粘るとしよう。昨日からのこと...

№66 声(みうらじゅん『アウト老のすすめ』)
早朝、暗いうちに目が覚めた。眠るのは諦めて、布団の中でラジオをつけた。久しぶりに聞く、NHKラジオ。深夜から、翌朝まで、一人のアナウンサーが日替わりで司会を務める番組。以前はよく、時間調整のため、起きる時間まで、小さな音で聞いていた。定年を...

№64 東京(龍幸伸『ダンダダン』)
暫くぶりに、東京へ向かった。4月になったら遊びに来いと、従兄弟たちから誘われて。新幹線に乗るのも数年ぶり。駅に行ってから切符を買おうと、ふらりと家を出た。平日にしては、随分と混雑している。こんなだったろうか。窓口で、ようやく通路側の席を一つ...

№63 虎と鱒(映画『男はつらいよ』に想う)
月曜日、火曜日とそれなりに、朝から夕方まで、事務作業を進めた。水曜日になり、一日、休みにしようと思い立った。働いたといっても、9時から事務所に詰めて、4時を目処にあがる、というリズム。水曜日も休むことにすれば、週休3日。夢のようなサイクルに...

№60 退職②(『花束』に想う)
33年間勤めた職場。最後の一日が始まった。午前中から、断続的にセレモニーが続く。私の職場では、定年年齢が見直されている途中。暫く、隔年で退職者が多い年と、極端に少ない年とが繰り返す。昨年、定年が一年延びた人達を含め、今年は退職者の多い年。近...

№59 退職①(『お弁当作り』に想う)
遂に、この朝がきた。退職の日。出かけようとする私のことを、長女が、玄関先まで見送りに出てくる。ただし、これは、いつもの習慣。家族の誰かが出かけるとき、玄関で見送る家族のしきたり。亡くなった妻が定着させたルールである。妻の実家でも、妻が小さか...

№58 休学(『シュレッダー』に想う)
退職を前にした数日。職場のデスク周りの整理に追われた。溜まった書類を整理し、シュレッダーをかける。その間、退職を知った知り合いが、断続的に訪ねてきてくれた。書類整理の手を止めて、一人一人。こちらからは同じ説明をし、相手からはねぎらいの言葉な...

№57 運動(村上春樹『1Q84』)
退職を前に、先輩からお昼ご飯に誘われた。秘書が付く立場まで上り詰めた方。職場の裏のビル。地下の料理屋の個室を予約したので、12時になったら来て下さい。数日前、秘書からそんなメールを受け取っていた。昨年後半、人事当局へ伝えた私の早期退職の意向...

№56 内示の朝(『桜の花』に想う)
朝、通勤バスの中。窓から外を眺めていたら、こんな風景が目にとまった。背の高い男性と、小さな少女。交差点で信号待ちをしている。男性は、こちらに顔を向け、少女は背中ごし。ランドセルの肩紐を、両方、それぞれに握りしめ、斜めに男性を見上げ、何か会話...

№49 かにとももとかめ(赤松利市『藻屑蟹』)
朝の出勤時。職場のある八階まで。朝だけは階段で登るようにしている。一応、健康維持のため。早朝の、その時間帯。外部委託の清掃員の人達も、階段の踊り場などを使いながら、作業をはじめる準備をしている。床を水拭きするためのモップを、ところどころ立て...