ちちプロ №55 退学(夏目漱石『草枕』) 仕事を終え、家に戻る。直前に帰っていた二男と、リビングで鉢合わせになった。モコモコとした、黒いダウンジャケットを着たままの二男。神妙な顔つき。帰ってきたばかりのところ、申し訳ないんだけど、と話し出す。何だ、何だ、今度は何があった。重大なこと... 2025.02.26 ちちプロ
ちちプロ №54 巣立ちの春(『おにぎりと百均』に想う) 日曜日の朝。バナナを一本だけ食べて、直ぐに活動を開始した。休日も、短時間だけ、きまって早朝、まだ誰もいない職場に行く。管理職になってからの習慣となっている。一つには、週明けからの仕事の段取りを確認するため。また、一つには土日の新聞に目を通し... 2025.02.25 ちちプロ
ちちプロ №53 卵の薄皮(『茹で卵』に想う) 休日のお昼過ぎ。たくさん茹でた卵。殻をむきながら考えた。こんなふうに、むつむつと文句も言わず、何年も家事を続けた主婦ほど、心の中で「熟年離婚」を考えたりしているのだろうな、と。夫の方は、定年後、妻とゆっくり旅行でもしよう。そう、ぼんやり考え... 2025.02.15 ちちプロ
ちちプロ №52 レジリエンスと探し物(『合鍵』に想う) 朝、家族の、こんなLINEのやり取りに気がついた。鍵を無くして家に入れない。誰か開けて欲しい。それは前夜の午前零時頃。二男からのもの。夜更かしの長女から、呑気な「オッケー」のスタンプが返信されている。どうやら無事、家に入って今は寝ているよう... 2025.02.05 ちちプロ
ちちプロ №47 千と千尋とサンショウウオ(井伏鱒二『山椒魚』) ネットで調べ物をしていた時のこと。こんな質問箱のやり取りに目が留まった。「千と千尋の神隠し」をまた見た。4回目である。しかし、まったく意味が分からない。オクサレ様は、帰るとき、どうして「よきかな」と言ったの?カオナシって何者?最後にこちらの... 2024.12.28 ちちプロ
ちちプロ №45 アンコンシャスバイアスの歯車(芥川龍之介『歯車』に想う) ある朝、職場で。こんな様子が目にとまった。若手の男性職員が、打ち合わせテーブルの上の、その日の各社の新聞を畳んで整理している。続けて、前日の新聞を、それぞれのホルダーへと綴り直す作業。そうか、N子さんが病気休暇で、しばらく休んでいるからだ。... 2024.12.10 ちちプロ
ちちプロ №44 サンタと入試面接(『クリスマス』に想う) ひと月ほど前の土曜日の早朝。ふと気が付くと、廊下の奥のドアの前に、長女がぬっと立っていた。ボサボサの長い髪。今、起きたばかりなのだろう。なぜだか満面の笑みである。こちらを見たまま、動かない。つい、声が出た。「何だ、何だ。どうした、どうした?... 2024.12.05 ちちプロ
ちちプロ №42 谷川俊太郎の宇宙(谷川俊太郎『旅』) その日の朝の新聞各紙。不思議なくらいに沢山の、谷川俊太郎さんの記事だった。朝日新聞の「天声人語」。案の定、谷川さんの話題である。「天声人語」らしく、谷川さんと、詩人のねじめ正一さんが、即興漫才をしていたのを見たことがあるという、ちょっと意外... 2024.11.23 ちちプロ
ちちプロ №37 アトムとかたつむり(浦沢直樹『PLUTO(プルートゥ)』) マンションの駐車場に着き、車から降りようとドアに手をかけた時のこと。ちょうど目が行く、ドアミラーの付け根のあたり。小さなカタツムリと目があった。いつからそこに、ひっついていたものか。数年前、施設に移った私の両親が残した郊外の家。今や、休日の... 2024.10.30 ちちプロ
ちちプロ №23 天声人語と死刑囚(ドストエフスキー『罪と罰』) このブログの文章の一つのお手本は朝日新聞の「天声人語」だと思っている。日課として、毎朝、複数の新聞にざっと目を通す。近年、コラムまで読むことはないが、ある日の「天声人語」には、ふと目が留まった。「死刑執行の告知を当日に行う現在の運用は違憲だ... 2024.04.20 ちちプロ