ちちプロ

○ちちプロ 「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙プロジェクト」
(略称:ビジネスマンの父からの手紙プロジェクト)
子供達へ仕事や社会の理屈などを伝えようとする個人的なプロジェクト

 

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№67 仲直り(志賀直哉『暗夜行路』)

休日の夕方。相撲中継を見ながら、リビングで一人、ブログの作業をしていた。集中したくて、テレビの音を絞ったまま。廊下の奥の玄関で、ガチャリと音がした。誰か帰ってきたようだ。ただいま、と長男が、玄関でつぶやく声が聞こえた。すかさず、お帰り、と返...
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№62 入学式(J.S.バッハ『主よ、人の望みの喜びよ』)

4月に入ってまもなくの平日。長女の大学の入学式だった。仕事を続けていたら、休暇を取ってまで出席しようとは思わなかっただろう。しかし、今なら、自分次第。長男と、二男は、中学生の頃には既に、私が行事に出ることの方を煙たがるようになった。自分のそ...
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№61 手紙(米米CLUB『手紙』に想う)

退職後の日々。小さなビジネスをスタートする準備を進めている。一人、こつこつと。両親が残した、郊外の一軒家。応接間だけでも、事務室風に変えたいと考えている。炬燵やテレビを、奥の座敷へ移動させ、応接用兼、作業用の大きめのテーブルを一つ置く。両親...
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№55 退学(夏目漱石『草枕』)

仕事を終え、家に戻る。直前に帰っていた二男と、リビングで鉢合わせになった。モコモコとした、黒いダウンジャケットを着たままの二男。神妙な顔つき。帰ってきたばかりのところ、申し訳ないんだけど、と話し出す。何だ、何だ、今度は何があった。重大なこと...
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№54 巣立ちの春(『おにぎりと百均』に想う)

日曜日の朝。バナナを一本だけ食べて、直ぐに活動を開始した。休日も、短時間だけ、きまって早朝、まだ誰もいない職場に行く。管理職になってからの習慣となっている。一つには、週明けからの仕事の段取りを確認するため。また、一つには土日の新聞に目を通し...
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№53 茹で卵の作り方(『卵の薄皮』に想う)

休日のお昼過ぎ。たくさん茹でた卵。殻をむきながら考えた。こんなふうに、むつむつと文句も言わず、何年も家事を続けた主婦ほど、心の中で「熟年離婚」を考えたりしているのだろうな、と。夫の方は、定年後、妻とゆっくり旅行でもしよう。そう、ぼんやり考え...
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№52 レジリエンスと探し物(『合鍵』に想う)

朝、家族の、こんなLINEのやり取りに気がついた。鍵を無くして家に入れない。誰か開けて欲しい。それは前夜の午前零時頃。二男からのもの。夜更かしの長女から、呑気な「オッケー」のスタンプが返信されている。どうやら無事、家に入って今は寝ているよう...
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№47 千と千尋とサンショウウオ(井伏鱒二『山椒魚』)

ネットで調べ物をしていた時のこと。こんな質問箱のやり取りに目が留まった。「千と千尋の神隠し」をまた見た。4回目である。しかし、まったく意味が分からない。オクサレ様は、帰るとき、どうして「よきかな」と言ったの?カオナシって何者?最後にこちらの...
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№45 アンコンシャスバイアスの歯車(芥川龍之介『歯車』に想う)

ある朝、職場で。こんな様子が目にとまった。若手の男性職員が、打ち合わせテーブルの上の、その日の各社の新聞を畳んで整理している。続けて、前日の新聞を、それぞれのホルダーへと綴り直す作業。そうか、A子さんが病気休暇で、しばらく休んでいるからだ。...
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№44 サンタと入試面接(『クリスマス』に想う)

ひと月ほど前の土曜日の早朝。ふと気が付くと、廊下の奥のドアの前に、長女がぬっと立っていた。ボサボサの長い髪。今、起きたばかりなのだろう。なぜだか満面の笑みである。こちらを見たまま、動かない。つい、声が出た。「何だ、何だ。どうした、どうした?...