№12 メールの宛先(篠原健太『スケット・ダンス』)

雑文

部下から受けたメールにどこか違和感があった。
複数の人に対して、何か問い合わせをしている内容。
どうやら本文に「○○様」という宛名を付けていないことが原因で、少しおかしくなったようだ。

システム上の宛先欄に個人名が表示されるから、本文では省略しても良いだろう、合理化である、という理屈かもしれない。
最近、そのチームのグループリーダーがそんなスタイルになってきている。
それを真似たものだろう。

スマホで短くやり取りするメールなどなら、確かにその方が普通だ。

しかし、ビジネス用ではどうか。

システム上の宛先欄の個人名だけでは、送信者が、どういう属性の人達にあててメールを出したかったのか、その情報がつかめなくなる。

メールを送る際、○○業務担当者様などの文字を打ってみれば、頭の整理もつき、書くべき文章も自ずと決まってくる。

その部下も、直属の上司である私に対して、そのメールで自分に報告してこいと伝えたかった訳ではないようだ。
つまりは、私に宛てた文章にはなっていなかったわけだ。

いわゆるCCで出すべき気持ちだったのかもしれない。
そうならせめてCCを使って送ってきて欲しい。
意味が通じない文章を読み込み、部下の状況や気持ちを想像してようやく少し腑に落ちる。
甘い私だから良いようなものの、厳しい上司と組むようになったら大変だ。

そもそも安易に形式を崩すから、おかしなことになるのだ。

忙しいのだろうがこちらも余計な手間である。部下の今後を思えば一言注意すべきだろうか、それとも気落ちさせては可愛そうだろうか。などと考える時間にまたストレスがたまる。

「スケット・ダンス」という漫画がある。
むかし二男が数巻、単行本で買っていたようだ。

邪魔な家具の配置換えなどのあげく、私の寝部屋に、二男の本棚が幾つか移動してきている。
その本棚の中に、数冊が収まっている。

極端に早く目が覚めてしまって、その後眠れないような早朝、仕事のことを考えすぎないようにするため、布団の中で、既に読んだ漫画を手にすることがある。
そんな時、スケット・ダンスは丁度良い。

13巻の中のエピソードで「ユーガッタメール!」という話しがある。
前編・中編・後編の三話で構成。
主人公とヒロインの勘違いのケータイメールのやり取りが次第にエスカレートしていく。
ドタバタに加え、実はお互い気付かず惹かれている気持ちのやり取りが面白い。

スケット・ダンスは、夢中になって読むというほどではないものの、ほろりとさせる話しや元気の出る話しなど、印象に残るストーリーが、都度、数話で完結する作りとなっている。
二男が、一巻から買いそろえるでもなく、中途半端なところから数冊買って、それきりとしている気持ちも良くわかる。

このブログは、社会人になっていく我が家の子供達や、可能ならその先の子孫へ向けたアドバイスを記したい、と目論んでいる。

ビジネスメールのルールなどは、或いは、これからも激しく動いていくかもしれない。

しかし、普遍的な教訓もある。

チェンジとか、変革を何かカッコ良いことのように振り回し、形式などを軽んじる人がいる。

もちろん改善は大事なことだ。
職業人として、自分の仕事を常に良い方向へ変えていこうとするスタンスはとても大切だ。

一方で、自分の能力を過信し過ぎて、過去から積み上げてきた前例を軽んじてはいけない。

経験上、たいていの場合、それらには今の自分のレベルでは気付けない、深い意味があることが多いのだから。

2023年10月某日

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