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ねこプロ

№36 オラオラデ(若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』)

少し前のこと。「おらおらでひとりいぐも」この作品で芥川賞作家となった若竹千佐子さん。その半生をたどる番組を、NHKでやっていた。ついつい通して最後まで見た。若い頃の挫折。家庭を得た安らぎ。文学への思い。専業主婦として日々が過ぎていくことへの...
ちえプロ

№35 砥石とナマズ(高村光太郎『鯰』に想う)

いつも使っている包丁の刃先に、小さな錆びが浮かぶようになった。この夏も、随分と湿度が高かった。そのせいもあったと思う。ひどい時は、砥石で研いだ後、ちょっと目を離した小一時間くらいの間に、再び錆びが出ていることがあった。暫く前。父と母が、施設...
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№34 風船とレモン(梶井基次郎『檸檬』に想う)

むかし梶井基次郎の文章が頭から離れなかった時期がある。短編の「檸檬」に、少しかぶれていたと言ったほうがよいかもしれない。何かにつけ、その空気感を思い出し、浸っていることがあった。一つ思い出がある。二度目の大学受験も思うようにいかず、浪人二年...
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№33 トチの実と梅酒(高村光太郎『智恵子抄』)

朝、通勤バスを降りた後。職場へと向かう途中、信号待ちとなる。砕けたトチの実が散乱し、かなり歩道が汚れている。この時期、こんな看板が立つ。「注意、トチの実が落ちます」そっと上を見上げ、街路樹の枝が頭の上にかかっていないか確認する。信号待ちの立...
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№32 ピーマンと「ねこプロ」(佐野洋子『100万回生きたねこ』)

憂鬱な雨の月曜日。職場へ向かう、いつもの朝のバスの中。また同じことを考えている。自分は、何時までこの繰り返しを続けるつもりなのかと。次に進む準備は続けている。後は決断だ。小さい頃、ピーマンの味が苦手だった。残すことはしなかった。料理に入って...
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№31 行き合いの空(『巻雲と積雲』に想う)

勤務時間終了後すぐのこと。仕事上の昔の苦労話しを、ふと思い出した。それを引き合いに、今進んでいる案件のリスクについて、部下に一言話しておきたくなった。帰る前にと、担当チームのデスクへ向かう。それは、チームリーダーの目の前の席にいる中堅職員に...
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№30 バイトと洗濯(『柔軟剤』の香りに想う)

休日の朝。大学四年の二男が、6時前だというのに、何やらごそごそと身支度をはじめている。普段は、午前中いっぱい寝ているくせに。先般、ようやく就職の目処が付いた二男。希望していた職場に滑り込めた様子。自分で納得のいく結果であれば、それで何よりだ...
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№29 AIと音声アプリ(フジファブリック『若者のすべて』)

高校生の長女が、私がブログで何を書いているのか、少し気にしている。自分達の日常が、話しのタネにされていると知ったら、どう思うだろう。もしかしたら、書かれたくない話もあるのだろうか。そもそも彼女たちの話題を持ち出してまで組み立てようとする私の...
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№28 兄妹喧嘩(ヒゲダン『Subtittle』に想う)

Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)の「Subtittle(サブタイトル)」という曲。前々から気になってはいた。MV(ミュージックビデオ)を断片的に見る限りでは、また泣かされそうな気配。以前「I LOVE(アイラブ)...
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№27 ジェームスとパウル・クレー(パット・メセニー『オフ・ランプ』)

パット・メセニー・グループに「ついておいで」という曲がある。原題は Aer You Going With Me?この曲と共に、いったいどれだけの眠れない夜を越えてきたか数え切れない。昂ぶった気持ちを落ち着かせるためであったり、痛みを耐えるた...