№109 風に吹かれて(宮本浩次『はじめての僕デス』)

ちちプロ

少しは運動しなければ、と考え、朝、ラジオ体操をしている。

六時台のテレビ放送に合わせ、寝起きの肩や背中を、毎度バキバキといわせている。

チャンネルをそのままに、テレビの前を離れ、身支度などを始めていると、まもなく呑気な歌が聞えてくる。『みんなのうた』の時間なのだ。

最近は頻繁に、古い曲も、過去の懐かしい映像のまま流している。

ある朝、昭和のアニメーションのクレジットに、ふと目がとまった。
『はじめての僕デス』というタイトルの曲。
転校生の、男の子のお話し。

この数日、何度か耳にした曲だった。
小学生の頃、転校したことを思い出したりしながら、横目で見ていた。

これまでは、気が付かなかったのだが、よく見ると「うた宮本浩次」となっている。
ロックバンドの、エレファントカシマシのボーカルと同じ名前である。

はて。
同一人物なのだろうか。

綺麗なボーイソプラノで、声質からは、まったく判別できない。

ぼんやり考えていると、そのうち、二曲目となった。
近年の曲。少し抽象的なアニメーションの映像。

見れば、こちらも「うた宮本浩次」となっている。
紛れもなく、聞き馴染みのある、あの強い声。

ここまでくれば、そういう演出なのだろう。
小学生の頃から、同じ名前で、そうやって歌ってきた人なのだ。

エレファントカシマシは、私も、大ヒットした『今宵の月のように』が好きで、今でも時々聴いている。

宮本浩次(ちなみに「ひろじ」)さんは、かなり個性的なキャラクターの人である。

『今宵の月のように』以降、密かに、ひいきにしてきたのだが、歌番組などで、司会者とやり取りしている姿などを見かけると、いつもちょっと、ハラハラ見守る気持ちにさせられた。

調べて見れば、小学生の頃、NHK東京児童合唱団に入っていた、ということらしい。

この『はじめての僕デス』がソロデビュー曲。立派なセールスを記録している。
その経歴は、ちょっと面白い。いや、宮本さんらしい。

年齢を超越したような人、と思っていたが、調べてみれば、私より一学年上の人だったようだ。

動画を検索してみると、コンサートで歌っている姿などが、沢山アップされていた。
最近の映像からは、確かに、私の年代相応に、年を重ねてきたことが分かる。

『風に吹かれて』というヒット曲もある。
幾つか動画を見比べた。

汗まみれの、若い頃のコンサートの映像もよいが、年を経て、今、歌っている姿も、たとえ高い声が綺麗にでていなくても、味わいになっている。

このタイトルを選ぶ以上は、当然、ボブ・ディランを踏まえて、ということなのだろう。

私は、例えばビートルズなら、かなり熱心に聞いてきたが、ボブ・ディランの方は、これまで、ほとんど接点がなかった。

しかし、なにしろ2016年(平成28年)、歌手として初めてノーベル文学賞を受賞した人である。

当時そのニュースを聞いたときには、驚いたものだった。
(あれからもう10年経っている、というものびっくりだけれども。)

遅まきながら、私も、これからボブ・ディランを聴いていこうと考えている。
それは、文学作品等を、なるべく古典から読んでいこうというのと、ほとんど同じ理屈だ。

どうやら、朝の体操が、私のところへも、ちょっと不思議な経路をたどって、大事な風を、吹かせてくれたようだ。

2026年9月某日

 

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