カイタ

ちえプロ

№35 砥石とナマズ(高村光太郎『鯰』に想う)

いつも使っている包丁の刃先に、小さな錆びが浮かぶようになった。 この夏も、随分と湿度が高かった。 そのせいもあったと思う。 ひどい時は、砥石で研いだ後、ちょっと目を離した小一時間くらいの間に、再び錆びが出ていることがあった。 暫く前。 父と...
ねこプロ

№34 風船とレモン(梶井基次郎『檸檬』に想う)

むかし梶井基次郎の文章が頭から離れなかった時期がある。 短編の「檸檬」に、少しかぶれていたと言ったほうがよいかもしれない。 何かにつけ、その空気感を思い出し、浸っていることがあった。 一つ思い出がある。 二度目の大学受験も思うようにいかず、...
ちえプロ

№33 トチの実と梅酒(高村光太郎『智恵子抄』)

朝、通勤バスを降りた後。 職場へと向かう途中、信号待ちとなる。 砕けたトチの実が散乱し、かなり歩道が汚れている。 この時期、こんな看板が立つ。 「注意、トチの実が落ちます」 そっと上を見上げ、街路樹の枝が頭の上にかかっていないか確認する。 ...
ねこプロ

№32 ピーマンと「ねこプロ」(佐野洋子『100万回生きたねこ』)

憂鬱な雨の月曜日。 職場へ向かう、いつもの朝のバスの中。 また同じことを考えている。 自分は、何時までこの繰り返しを続けるつもりなのかと。 次に進む準備は続けている。 後は決断だ。 小さい頃、ピーマンの味が苦手だった。 残すことはしなかった...
ねこプロ

№31 行き合いの空(『巻雲と積雲』に想う)

勤務時間終了後すぐのこと。 仕事上の昔の苦労話しを、ふと思い出した。 それを引き合いに、今進んでいる案件のリスクについて、部下に一言話しておきたくなった。 帰る前にと、担当チームのデスクへ向かう。 それは、チームリーダーの目の前の席にいる中...
ちえプロ

№30 バイトと洗濯(『柔軟剤』の香りに想う)

休日の朝。 大学四年の二男が、6時前だというのに、何やらごそごそと身支度をはじめている。 普段は、午前中いっぱい寝ているくせに。 先般、ようやく就職の目処が付いた二男。 希望していた職場に滑り込めた様子。 自分で納得のいく結果であれば、それ...
ねこプロ

№29 AIと音声アプリ(フジファブリック『若者のすべて』)

高校生の長女が、私がブログで何を書いているのか、少し気にしている。 自分達の日常が、話しのタネにされていると知ったら、どう思うだろう。 もしかしたら、書かれたくない話もあるのだろうか。 そもそも彼女たちの話題を持ち出してまで組み立てようとす...
ねこプロ

№28 兄妹喧嘩(ヒゲダン『Subtittle』に想う)

Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)の「Subtittle(サブタイトル)」という曲。 前々から気になってはいた。 MV(ミュージックビデオ)を断片的に見る限りでは、また泣かされそうな気配。 以前「I LOVE(アイ...
ちえプロ

№27 ジェームスとパウル・クレー(パット・メセニー『オフ・ランプ』)

パット・メセニー・グループに「ついておいで」という曲がある。 原題は Aer You Going With Me? この曲と共に、いったいどれだけの眠れない夜を越えてきたか数え切れない。 昂ぶった気持ちを落ち着かせるためであったり、痛みを耐...
ちえプロ

№26 せきれい(椎名誠『雨がやんだら』)

夕飯の買い物袋を両手にさげ、スーパーから家に戻る道すがら。 路上駐車しているSUVの車の高い屋根の上。 ひょっこり、小さな鳥が顔を出した。 かなり近いが、飛び立つでもなく、人懐こいような仕草でこちらを気にしている。 細いくちばし、まだらなグ...