ねこプロ №60 退職②(『花束』に想う) 33年間勤めた職場。最後の一日が始まった。午前中から、断続的にセレモニーが続く。私の職場では、定年年齢が見直されている途中。暫く、隔年で退職者が多い年と、極端に少ない年とが繰り返す。昨年、定年が一年延びた人達を含め、今年は退職者の多い年。近... 2025.03.31 ねこプロ
ねこプロ №59 退職①(『お弁当作り』に想う) 遂に、この朝がきた。退職の日。出かけようとする私のことを、長女が、玄関先まで見送りに出てくる。ただし、これは、いつもの習慣。家族の誰かが出かけるとき、玄関で見送る家族のしきたり。亡くなった妻が定着させたルールである。妻の実家でも、妻が小さか... 2025.03.31 ねこプロ
ねこプロ №58 休学(『シュレッダー』に想う) 退職を前にした数日。職場のデスク周りの整理に追われた。溜まった書類を整理し、シュレッダーをかける。その間、退職を知った知り合いが、断続的に訪ねてきてくれた。書類整理の手を止めて、一人一人。こちらからは同じ説明をし、相手からはねぎらいの言葉な... 2025.03.30 ねこプロ
ねこプロ №57 運動(村上春樹『1Q84』) 退職を前に、先輩からお昼ご飯に誘われた。秘書が付く立場まで上り詰めた方。職場の裏のビル。地下の料理屋の個室を予約したので、12時になったら来て下さい。数日前、秘書からそんなメールを受け取っていた。昨年後半、人事当局へ伝えた私の早期退職の意向... 2025.03.29 ねこプロ
ねこプロ №56 内示の朝(『桜の花』に想う) 朝、通勤バスの中。窓から外を眺めていたら、こんな風景が目にとまった。背の高い男性と、小さな少女。交差点で信号待ちをしている。男性は、こちらに顔を向け、少女は背中ごし。ランドセルの肩紐を、両方、それぞれに握りしめ、斜めに男性を見上げ、何か会話... 2025.03.15 ねこプロ
ちちプロ №55 退学(夏目漱石『草枕』) 仕事を終え、家に戻る。直前に帰っていた二男と、リビングで鉢合わせになった。モコモコとした、黒いダウンジャケットを着たままの二男。神妙な顔つき。帰ってきたばかりのところ、申し訳ないんだけど、と話し出す。何だ、何だ、今度は何があった。重大なこと... 2025.02.26 ちちプロ
ちちプロ №54 巣立ちの春(『おにぎりと百均』に想う) 日曜日の朝。バナナを一本だけ食べて、直ぐに活動を開始した。休日も、短時間だけ、きまって早朝、まだ誰もいない職場に行く。管理職になってからの習慣となっている。一つには、週明けからの仕事の段取りを確認するため。また、一つには土日の新聞に目を通し... 2025.02.25 ちちプロ
ちちプロ №53 茹で卵の作り方(『卵の薄皮』に想う) 休日のお昼過ぎ。たくさん茹でた卵。殻をむきながら考えた。こんなふうに、むつむつと文句も言わず、何年も家事を続けた主婦ほど、心の中で「熟年離婚」を考えたりしているのだろうな、と。夫の方は、定年後、妻とゆっくり旅行でもしよう。そう、ぼんやり考え... 2025.02.15 ちちプロ
ちちプロ №52 レジリエンスと探し物(『合鍵』に想う) 朝、家族の、こんなLINEのやり取りに気がついた。鍵を無くして家に入れない。誰か開けて欲しい。それは前夜の午前零時頃。二男からのもの。夜更かしの長女から、呑気な「オッケー」のスタンプが返信されている。どうやら無事、家に入って今は寝ているよう... 2025.02.05 ちちプロ
ちえプロ №51 光の中の細雪(トルストイ『光あるうち光の中を歩め』) 一日の仕事を終え、職場を出る。帰りのバス停へと向かう。この時期の、その時間帯。日は落ち、すっかり辺りは暗くなっている。微かに明るさの残る、深く濃い赤紫の曇り空。見上げると、ちらちらと細かい雪が降っている。風があるのだろう。早いテンポで雪片が... 2025.02.01 ちえプロ